砂になった人

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最新のグランジミュージックの動向 ― Modern Grungeについて

 突然に音楽の話を。

 最近の気になる動向として、海外音楽シーンにおける「グランジリバイバル」があります。文字通りですが、Pearl JamNirvanaなどのレジェンド的バンドに代表される'Grunge'が、現行の音楽シーンにおいて再解釈・再構築され、新たな形で復活を遂げているです。この動向を語るに際して'Grunge'とは何かを考えなくてはならない気がしますが、こんなニッチ中のニッチのその下レベルに該当する弱小ブログのグランジに関する記事にたどり着く読者の方は、'Grunge'を良く理解していると勝手に思い込んでいますのでスルーします(そもそも音楽のジャンルに厳格な定義を当てはめて議論していくことが反吐が出るレベルで嫌いですが)。

 勝手ですが、それらに該当するバンドを'Modern Grunge'と呼んでいます。個々のサウンドを一緒くたにしたり、ジャンルという枠で括る無意味さ、もとい愚かさを感じますが、今はそう呼んでいます。

 これらのバンドに一貫して観察される特徴として、Grungeの渋さやアグレッシブさとShoegazerの浮遊感を兼ね備えているバンドが非常に多いという点が挙げられます。その点から、'Grunge Gaze''Space Grunge'といういかにも造語チックな呼称で表現することもできるかもしれません(Bandcampに一応タグは存在します)。

 Modern Grungeバンドの多くは、多種多様な音楽的文脈的視点からグランジサウンドに対してアプローチを繰り広げているイメージがあります。例えば、先述の通りShoegazer的な視点からグランジを再構築しているバンド、また、前身がHardcoreであるためにHardcore的なアプローチを執っているバンドもあります。中には、Indie Rockの要素も…と、例を挙げてるとキリがありませんので、この辺りで留めておきましょう。このように、多文脈を包含した、というよりはジャンルのクロスオーバーを織りなしているのがこの'Modern Grunge'なのです。

 小中学生の頃は狂ったようにPuddle of MuddLifehouseなどの2000年代のPost-Grungeを聴きまくっていたことがあり、懐かしさからこのグランジブームに強く惹かれるという点もあるかと思いますが、何が私をここまで惹きつけるのかといえば、やはりModern Grungeサウンドが抱擁する多文脈性だと思います。住む世界を異にする(完全に異かと言われると、そうではないと思いますが)サウンド同士が交わることによる危険な化学反応が、やはり何とも言えぬ魅力なのだと思います。

言葉を羅列するだけではあまり伝わらないと思うので、Modern Grungeに直接触れていただきたいと思います。以下に7バンドほど、個人的な独断と偏見で紹介します。長いとは思いますが、Quarantine Playlist だと考えてぜひお付き合いください。

 

① Soul Blind

NY出身。ハードコア等に立脚するであろうスタイルと,昔懐かしのサウンド,さらには独特の浮遊感というかSpace感というかがクロスオーバーしていて非常に面白い。個人的最重要バンドである。Twitter上でリプライをもらったのですが,Failureに強く影響を受けているとのこと。確かにあのSpace感とベースの唸りはFailureゆずりだなと思う。

Soul Blind - "Crawling Into You"

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Narrow Head

TX出身。最近新譜が出たのだが,これがなかなかというより非常に良すぎる。DeftonesOleanderと出会った結果みたいなサウンドを醸し出していて非常にユニークである。懐かしサウンドすぎて要所要所で鳥肌の嵐に見舞われる。GodfleshのTeeを着てるのも非常に好感を持てる。しかも,安心安全のRun For Coverである。

Narrow Head - "Stuttering Stanley"

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My Ticket Home

OH出身。このバンド面白いのが,2010年あたりにゴリゴリのTHE RISE RECORD METALCOREをやっていたのである。今,ベースボーカルをしているNickはかつてピンのスクリームボーカルをやっていたのである。そのため,Run For Cover界隈では語られることもないのである。

彼らのLatest Album(といっても2017年だが)は強烈なポストグランジアルバムである。彼らのことを"Nu Metalcore"と形容する人が多いが,どう考えてもPuddle of Mudd直系サウンドのポストグランジなのである。さらに,スクリームや疾走感あふれるリフの嵐とのクロスオーバーで聴いていて非常に気持ちいい。さらに,ベースボーカルNickのルックスがイケすぎており,どこかカート・コバーンっぽさがある。

余談であるが,彼らを聴いていると2006年あたりのHyde(666のアルバムあたり?)のサウンドが想起される。Countdownは特にMy Ticket Homeっぽい。いや,彼らがHydeっぽいのか。

My Ticket Home - "Flypaper"

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④NOTHING

PA出身。多分,この記事にたどり着く人には説明不要であろう。シューゲなのかドゥームゆずりなのかは上手く言い表せないが,重厚な音像と多幸感あふれるサウンドがミックスされ,さらにグランジテイストがむんむんにあふれる何ともいいとこどりなエッチなバンド。言うまでもなく,Jesus PieceのAaronもベースとして参加しており,さらにRelapseから出ているという怖すぎるバンドである。

NOTHING - "Vertigo Flowers"

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⑤Superheaven

PA出身。安心安全のRun For Cover。大学の空きコマで彼らを聴きまくっているせいで,大学周辺を歩いていると脳内再生されるレベルで頭が洗脳されている。ちなみに,JarのLPもあるので家でも狂ったように聴きまくっている。

サウンドはPure Post Grungeである。が,演奏がかなり無機質かつ謎の寂寥感にあふれており,かつてのポストグランジの文脈とはまた異なったサウンドで興味深い。イントロのリフで使われているチョーキングは,最高のグランジリフである。

Superheaven - "Life In a Jar"

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⑥Teenage Wrist

LA出身。GTAVで有名なThe Chain Gang of 1974の人がボーカルをやっていた。今は,確か在籍メンバーが2人しかいない。ギターがボーカルを兼任するようになったらしく,新譜『Silverspoon』を聴くと,今のボーカルの声の方が好きだなと思ってしまった。

雑談は置いておいて,Teenage Wristは名門Epitaphからのバンドである。Epitaphらしからぬサウンドなのも面白いが,ボーカルのウィスパーボイスと声の抜き方が非常に独特でとにかくエロい。ギターもwet全開のリバーブが聴いていて浮遊感があって非常に心地よい。

Teenage Wrist - "Dweeb"

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⑦Fleshwater

 MA出身。Vein.FMのサイドプロジェクト的な扱いらしい。曲調からは,ドゥームを軸に据えた音像にグランジやエモの香りがする。シューゲイザー要素も強く多幸感あふれているが,ギターのリフがかなりヘヴィーかつアグレッシブでコントラストが非常に面白い。個人的には,Nothingの一歩先のヘヴィネスを据えたバンドだと勝手に解釈している。

 

 以上で切り上げますが,後日また適当に音楽紹介でもしようかと思います。